第99話「音の正体」百物語2013目次

語り:ヨサック ◆skAMDOCpdQ
316 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 06:59:41.65 ID:hqzLBEKk0
【第九十九話】ヨサック ◆skAMDOCpdQ『音の正体』
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高校の時美術部に所属していて、放課後は他の部活の友人を待ちながら、美術室で絵を描いたりしていた。

ある日、ブラスバンドの友人を待ちながら絵を描いていた。美術室には私一人。夕闇も迫り、そろそろ電気をつけようか…と考え出した頃。

パンッ

床が鳴った。学校の床が鳴る事はまま有る事なので、気にも止めなかったが、

パンッ パンッ

床は場所を変え次々と鳴る。よく聞いてみると、私の周りを廻っている様だ。
気のせい気のせい、と無視して絵を描き続けていると、

バ ン ッ !!

今までにない大きな音が、油絵道具箱からした。耐えきれなくなった私は、美術準備室へと逃げ込む。

パンッ パンッ

まだ床の鳴る音がする。
時々、美術準備室の入り口まで音はやって来るが、それ以上は入って来なかった。

しかし私は選択を誤った。美術準備室から出る扉は美術室へと通じる物一つしか無い…


317 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 07:01:06.94 ID:hqzLBEKk0
(2/2)
ブラスバンドが活動する音楽室から美術室は見えるが、私の状況までは分からないだろうし、部活中は携帯禁止だ…

1時間程、準備室に入って来ようとする(としかもはや思えなかった)音に怯えていただろうか。ふいに廊下がざわつき出した。ブラスバンドの活動が終わったらしい。

意を決した私は暗い美術室を通り抜け、廊下に飛び出した。

明るい階段の方へ走ると、丁度ブラスバンドの友人がやって来た。
半泣きの私は一緒に美術室に行って、と頼んだ。

美術室の電気をつけると、道具箱の中にあった絵の具が床に散らばっていた。それだけで泣きそうだった。
恐々と絵の具を拾う私に友人が尋ねる。

「あの踊ってた人は帰ったの?」

話を聞くと、音楽室から美術室で踊る女生徒が見えたらしい。

「あの人モデルなの?ずっと踊ってたよねw」

友人は笑って話すが、明かりひとつ無かった美術室で踊る女生徒が、明るい音楽室から見える訳もなく…

その後、美術室で独りきりになる事は絶対にしなかった。

【終】