第96話「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ」百物語2013目次
語り:KMT ◆nqnJikEPbM.8
- 308 :KMT ◆nqnJikEPbM.8:2013/08/24(土) 06:50:35.07 ID:kFPsVjJM0
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『ふ、ふ、ふ、ふ、ふ』
J君の実家には奇妙な祠がある。
庭の片隅にひっそりと奉られているそれは、誰が手入れしているわけでもないのに、埃が付かないそうだ。
「絶対に誰かが手を入れているに違いない」
そう思ったJ君は、ある日、一晩寝ずに見てやろう、と思ったと言う。
草木も眠る丑三つ時。襲い来る眠気に舟をこぎ始めたJ君の耳に奇妙な音が飛び込んできた。
『ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ』
笑い声のようだが、違う。
耳慣れない、しわがれた嫌な音だったと言う。
暗闇の中、音の出所を探る。
僅かな月明かりで照らされた祠に、身長50cmほどの人間がへばり付き、必死に息を吹きかけていたそうだ。
その祠は、今もJ君の庭の片隅に鎮座している。
【了】