第84話「なかにいる」百物語2013目次
語り:ヤプール ◆MY/4W00M4M
- 270 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 05:53:21.86 ID:hqzLBEKk0
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【第八十四話】ヤプール ◆MY/4W00M4M 様「なかにいる」
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私が以前付き合っていた彼女は霊感こそないものの、私以上のオカルト好きで、
よく心霊スポットに行っては写真を撮りまくっていた。
ある日、私の運転で自殺名所といわれる崖に二人で出かけた。
心霊スポットにデートとか冷静に考えるとおかしなやつらだが…。
曲がりくねった山道を進み、最終的に着いた先は2時間ドラマでよく見る断崖絶壁。
景色もよく、海風も気持ちよく、廃墟やトンネルにはない開放感があり、心霊抜きにして満喫した。
一方彼女はひたすら写真を撮りまくっていた。
いつもならそれだけ撮れば1枚くらいは不可解なものが写っていたのだが、結局何も撮れずそのまま帰った。
その帰り道、山道を走っていると、あるトンネルが目に付いた。
スピード注意! とか 事故多発! などの看板が入口に大量に置いてあるトンネル。
来るときにはこんなものは見なかったはずなのに…。
先程のスポットで何も撮れず消化不良だった彼女は、中を探索してみよう!と言い出した。
トンネルは、出入り口ともに見通しもよく、道路も山道にしては真っ直ぐで、道幅も広かった。
正直、事故が起きそうな要素はひとつもない。
それでもあの看板があるってことは、やはり何かあったのか?
献花やお札の一つでもあれば確信に迫ったかもしれないが、それすらない。
- 271 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 05:54:02.69 ID:hqzLBEKk0
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何もないから帰ろっか、と車に乗りドアを閉めた直後、
コンコン、とフロントガラスを叩く音がした、気がした。
彼女は聞いていないといったので、そのまま車を走らせると今度はバンバン、と
平手でフロントガラスをたたくような音がした。
流石にこれは彼女も聞いており、怖くなった私は出口まで一直線に走った。
そして出口に差し掛かったとき、
バンバン!バンバン!バンバン!バンバン!
音は一層激しさを増した。
しかし、トンネルを出てすぐに音はしなくなった。
が、フロントガラスは手垢でべっとり。
不気味だったが、近くにちょうどガソリンスタンドがあったので拭いてもらうことに。
店員も最初は手垢に驚いていたが、さっさと拭いてください!と伝えるとすぐに拭き始めた。
が、2往復ほど拭いて、すぐに窓ふきをこちらに渡して、こう言った。
「その手垢、内側に付いてるみたいですね」
お わ り