第7話「キャンプの夜」百物語2013目次
語り:成 ◆0ute.wyqdY
- 27 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/23(金) 21:27:03.37 ID:ME+Mw9fw0
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【第七話】 成 ◆0ute.wyqdY 様 『キャンプの夜』
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私は昔から怖がりなんだけど、幸いまだ怖い体験はしたことがないんだ
でもひとつ、子供の頃の不思議な体験を思い出したから、それを投稿することにする
私の家は裕福ではなかったから、旅行に行くことは滅多になかった
毎夏、二泊か三泊くらいのキャンプに行くのが唯一の家族での泊りがけのお出かけ
それ以外はほとんど遠出もしなかった
その年は、たまたま父の仕事の都合がついてゴールデンウィークにもキャンプに行った
5月の北海道はまだまだ寒くてね
風が強く、曇りがちだったそのキャンプ場の温度計は、ときたまマイナス1度を指していた
そんな中、夏しかキャンプをしなかった私たちの装備で耐えられるわけもなく、子供ら三人は車で寝ることになったんだ
後部座席を倒した車のトランクで毛布を敷いて、末っ子長女の私を真ん中に、兄妹三人川の字で眠りについた
いつもと違う場所、いつもと違う状況
眠れなくてもおかしくないのに、何故かすんなり私は寝入った
多分兄二人も、そうだったんだと思う
夜中、ふっと私は目が覚めた
風の音が酷く不気味に聞こえたことを覚えている
寝る前に差し込んでいたはずの街灯の光が妙に弱い気がして、何気なく窓の外を見た
窓の外、街灯の光を背に、誰かが車を覗き込んでいた
思わず大声を上げそうになったけれど、よくよく見ればそれは母の顔だったんだ
何だ、と少し拍子抜けをした
子供らだけで寝ていたものだから、様子が気になりでもしたんだろう
- 28 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/23(金) 21:29:00.83 ID:ME+Mw9fw0
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起きていこうかと少し思った
でも車のドアを開けようにも、両脇に兄が寝ている
だから私はただ母の顔をじっと見返した
母は何も言わず、ただじっとこちらを覗き込んでいた
街灯の光で、私が起きていることには気づいていたろうに、母はぴくりとも動かなかった
私はそのうち、また眠気が襲ってきて眠ってしまった
次に目覚めたのは朝だった
コンコンと窓をノックする母
何か違和感があったけれど、よくわからなかった
みんなでテントで朝食を食べた
「昨日風強かったね」
そう言ったら、父は笑って
「昨日はテントが飛ばないように母さんとずっと押さえてたよ」
と言った。
父のその発言そのものは、多分冗談だったんだろう
そういうことを言って子供をからかうのがすきな人だから
でも、私は『母さんは夜中様子を見に来てたでしょう』とは聞かなかった
だって、ふと思いだしたんだ
逆光の中に立っていたあの人は、母よりももっとずっと背が高かったってことを
【了】