第60話「夜の墓地」百物語2013目次

語り:可部 ◆7vU/OMinzs
202 :可部 ◆7vU/OMinzs:2013/08/24(土) 03:55:56.41 ID:f8yflt3K0
『夜の墓地』

(1/2)
私が子供の頃住んでた家の近くのお寺は、西側が墓地になっていた
夜になると寺は閉まるが、墓地には裏手の壊れた垣根からいつでも入る事ができたため
時々、夜の墓地に入って肝だめしをする者もいた
私が小学生の頃、友達と一緒に夜の9時ごろそのお寺の墓地に探検に行った
初めは怖かったが、特に何も出てこないので、調子に乗ってワイワイ騒いでいたら
寺の裏から一人のお坊さんが出てきて注意した
友達がお坊さんに「お化けとか出ないの?」と馬鹿な事を言ってしまったが、お坊さんは
そんなものはおらん、わしは昔からこの墓地を管理しているけど、そんなものは
一度だって見た事はない、と言う
それよりも夜によく人が入って来るから困る、この前もひどいのがいた

先週、見回ってたらそこの灯籠の所に気配がしてな、何かと思ったら
夜中に誰かが灯籠に抱きついとったんだよ
わしは叱ってやろうと思い、灯籠の後ろに回ったてみたら、体だけで顔が見えなくて
おかしいと思ってもう一度正面に回ったら、そいつ灯籠の穴から顔だけ出してた
しかも気味の悪いくらいのニコニコ顔してたんだよ
頭のおかしい浮浪者みたいでな、放っといたらいつの間にかどこかへ行ってしまったよ
お前達もそんなおかしなやつに会わんうちに早く帰りなさい


203 :可部 ◆7vU/OMinzs:2013/08/24(土) 03:57:48.36 ID:f8yflt3K0
(2/2)
私はそこにあった灯籠を見ましたが、穴はどう見ても直径が20センチもないもので
ここから顔を出せる人間がいるだろうか? 出したとしても今度は首が長すぎる
どう考えてもそれは頭のおかしい浮浪者なんかじゃなくて、
もっと別の、恐ろしいモノだったんじゃないかと思いましたが
頭のおかしい浮浪者だと平然と決めつけるお坊さんの方に、逆にコワい物を感じた私たちは
早々に退散したのでした。

【了】